平成29年渋谷幕張中学校社会②より 貨幣問題⑰ 幕末の為替

5月 5, 2023

どうも。歴旅です。今日もぶらりと歴史旅。中学受験、御三家の社会を楽しく学びましょう。

田沼意次や尾張藩の話も入れたいところですが、ちょっと飛んで時代は幕末。
この時代の金融政策ってどんなものだったんでしょうか?
徳川幕府がどれだけ尽力していたか、これは本当に知ってもらいたいところです。歴旅の私見ですが、江戸時代の経済政策、金融政策に成功した、尽力した人々の歴史はあまり語られず、いい評価は受けていないように思います。それは当時の武家社会が商売を下位の価値に位置付け、朱子学、武士道を重んじていたということもありますし、明治時代に徳川幕府を全否定したこともあります。しかし実際の政策、対策を見てみると、経済が分かっている幕僚が適切に対応してきたと思います。荻原重秀徳川吉宗、幕末の水野忠徳。金融政策はいい時代に評価されず、景気が悪くなってくると指摘される傾向にあるように思います。日本は金銀に溢れた黄金の国ジパングだったし、資源がなかったなんてウソです。そしてデリバティブなど世界最先端のシステムを構築していた。遅れていたなんてのもウソです。資源がない、遅れているというイメージは産業革命、帝国主義、石油についてだけ、ですかね。
さて、幕末の金融政策ですが、水野忠徳みずのただのりが現場での水際対策で必死に頑張ります。『大君の通貨』は歴史小説ですが、小説形式でありながらこの時代を的確に描写しています。イギリスのオールコックの視点から幕末を描き、商人出身のハリスが小判を買い漁る。金銀比価の違いから起こるインフレ。日本では金:銀=1g:5gだったのに対して国際基準は1g:16gでした。世界では金の価値がメチャクチャ高かった。日本は物価が異常に安い国というのは中国沿岸にいた欧米人の常識で、小判のかたちをした日本版ゴールドラッシュが目の前にあったのが分かります。優秀な現場官僚、無能な上司、金目当てで押し寄せてくる外国人。ハリスが日本で金を買い漁り蓄財したことは、彼の家から見つかった日記が出版されていることからわかるそうです。

なぜ儲かるのを簡単に書くと、
銀貨4を日本にもっていく→日本で金貨1に換える→中国で金貨1を銀に換えると銀貨16に。
日本で小判と両替するだけで4倍儲かる!!!現代でも結構驚異的。もう有り金全部銀貨にして日本を目指しますよ笑
そして日本と中国を往復しまくる!
まさにジャパニーズドリーム!
幕末ゴールドラッシュ!

 イギリスの世界戦略から見た明治維新も書きましたが、具体的現実的に幕府が倒れた原因はこの小判(金)の大量流出と小判価の引き上げによるインフレ(物価高騰)だったと思います。
同時代に大地震、飢饉、天然痘も襲っていますしね。政府機能を果たし切れなくなったのでしょう。

 ちなみに、新井白石の時代に貨幣改鋳とともに長崎貿易にメスを入れています。この時オランダ人は日本から金と銀を最大貿易品目にしていました。オランダの東南アジア覇権の基盤には石見銀山からの銀の流通にあり、それをストップするとオランダは衰退していきました。新井白石が出てくるまでに日本国内の銀の3/4が流出したと見られています。遅きに失した気もしますが、手を打っただけましでした。
 オランダが隆盛する。衰退する。徳川幕府が滅亡する。通貨というのはかくも国家の根幹に関わっているものなんですね。今のイギリスがEUになってもスターリング・ポンドを手放さない理由は…なぜでしょうか?!もうEUも離脱してしまいましたが、その根拠は?
答えは来年出す予定の想定問題に書いてあります笑

『大君の通貨』は名作です。難しい本ですが是非。
https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E5%90%9B%E3%81%AE%E9%80%9A%E8%B2%A8%E2%80%95%E5%B9%95%E6%9C%AB%E3%80%8C%E5%86%86%E3%83%89%E3%83%AB%E3%80%8D%E6%88%A6%E4%BA%89-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%BD%90%E8%97%A4-%E9%9B%85%E7%BE%8E/dp/4167627078