乙巳の変
どうも。歴旅です。
今日もぷらりと歴史旅。
今日は乙巳の変（いっしのへん）です。
中大兄皇子と藤原鎌足が画策し、蘇我馬子の孫、蘇我入鹿が目の前で暗殺された事件です。天皇の前でいきなり惨殺。壮絶な事件です。
（軽皇子関与説など複数ありますが、いったん通説でお話します）
これ以降、中大兄皇子が天智天皇となり、藤原氏が急速に力をつけ始めます。
ここで不思議なのは家臣である藤原鎌足が動かず、中大兄皇子本人が表立って暗殺に関与している点です。本当でしょうか。藤原鎌足の出自は不明です。論拠は今のところ見つかりませんが、天皇の候補者である皇子が直接的に手を下し、同じ場にいながら家臣の鎌足は動かず見ている。蘇我入鹿の威厳に恐れ入り、クーデターを起こすことに対する恐怖で動けなかった、という話がありますが本当でしょうか。他二人ほどスタンバイしていたのに切りかかれなかったことを考えると、ある程度妥当ですが、真偽のほどは定かではありません。
この状況から推測すると、藤原鎌足は何らかの理由で手が出せない立場だったのではないでしょうか。例えば外国人であり、蘇我入鹿暗殺をしたとなると外交問題に発展する状況でした。皇族である中大兄皇子本人が殺せば、蘇我入鹿は悪人だったと押し付けられます。（ちなみに暗殺された日は百済、高句麗、新羅からの三韓朝貢の日でした。）
天皇の家系図を見ると、このクーデター事件以降、ばったりと天皇家の家系から蘇我氏が消えます。聖徳太子もその子供もいたはずなのに、なぜか一家滅亡させられ、ばったりと天皇家からの家系から途絶えます。この山背大兄大王も詳細が分かりません。『上宮聖徳法王帝説』では聖徳太子の子とされていますが、『日本書紀』にはその記述がありません。聖徳太子と繋がる人物ということを隠したかったのでしょうか。
その山背大兄大王は言いがかりをつけられて蘇我入鹿に滅ぼされてしまった。そんな専横を許せず、中大兄皇子らは暗殺に踏み切った。それが通説です。
ここでそれぞれの関係を見てみましょう。
みな皇族であり、天皇の親戚ですが、
ここでは
①山背大兄大王
②古人大兄皇子
③中大兄皇子
がライバル関係であることが分かります。権力を掌握したい蘇我入鹿からすると、古人大兄皇子、山背大兄大王は従兄弟であることが分かります。関係性を考えると操りやすい立場にいるので滅ぼさなければならないほどではないように思います。
一方、中大兄皇子は一連の事件で一番得をしていることが分かります。蘇我氏の後ろ盾がない中、他の候補者を一掃できたのです。
乙巳の変では蘇我入鹿が皇極天皇の目の前で打ち取られました。この時古人大兄皇子は大市宮の私邸に逃げ帰り、「韓人（からひと）が入鹿を殺した。私は心が痛い」（「韓人殺鞍作臣 吾心痛矣」）と言ったそうです。事件当日は三韓朝貢の儀礼があった最中でした。文字通り外交官の誰かが入鹿を殺した、とも取れますが、それでは外交問題に発展してしまいます。外交官がそんなこと、表立ってやらないでしょう。日本に来たのも各国敵対している中、支援してもらいたいからです。
このころ百済、新羅、高句麗は戦争状態にあり、日本の軍事支援が極めて重要な意味を持っていました。その最中の事件。おそらくは「半島情勢の政治が入鹿を殺した」、つまり入鹿と外交方針が異なる中大兄皇子が、のちの百済支援に繋がる一連の行動をとるために殺したといえそうです。
蘇我入鹿の父蝦夷と聖徳太子は遣隋使を派遣していました。後継となる大唐帝国と新羅は同盟関係だったので、普通に考えると蘇我入鹿も新羅を支援していたのではないかと思います。
古人大兄皇子は蘇我入鹿亡きあと後ろ盾を失い、出家して山にこもりますが、謀反を計画していると密告を受け、中大兄皇子が検証もせずに攻め殺しています。
一体誰が政治を専横しているのか。。。
皇族、のちの天皇とはいえ結構テロリストですね。
それほどの何があったのか。今はわかりません。
聖徳太子は様々な功績を残したとされながらも、いつの間にか人知れず死亡。山背大兄大王も滅ぼされ、お墓も残っていません。不思議な状況です。
これまでの系譜を考えると、古代から天皇の親戚として存在し続けた物部氏、蘇我氏の方が古墳時代からの正当な豪族だったと推測されます。中大兄皇子が天智天皇に即位したのち、藤原鎌足の息子、藤原不比等が「日本書紀」の編纂事業を開始します。そして藤原不比等の4人の息子から摂家が始まり、藤原氏が天皇家と密に婚姻関係を結び、中央政治を動かし始めます。
このころの天皇家の系図を見るとわかるのですが、おもしろいくらいに蘇我氏、藤原氏系図の切替が起きています。
天智、天武天皇までの間に、蘇我氏の系譜が途絶えています。有力だった聖徳太子（厩戸皇子）の息子とされる山背大兄皇子は滅亡に追い込まれ、乙巳の変で蘇我入鹿が殺されたことを契機に蘇我氏が滅亡します。
聖徳太子、聖人のような扱いをされているのになぜ？？？？
そして徐々に藤原氏が入り込んできました。
彼らが「正史」を書いているのです。
先の事件の顛末、蘇我氏が悪だったようですが．．．
ほんとのところはどうなんでしょうか。
真実は闇の中です。