平成29年桜蔭中学校社会②より お茶の歴史④ 南蛮貿易とお茶

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千利休切腹理由。もう一つ茶器の価値暴落もあると思います。
この時代、南蛮渡来の宝物、と言えば割と何でも売れた時代です。しかも一国相当の宝物!となったら今じゃとりあえず茶器1つ5億円くらいはするでしょうか。当然詐欺師が出てきます。

千利休は切腹させられましたが、同じく切腹させられそうになった商人がいます。
呂宋助左衛門《るそんすけざえもん》です。
彼も戦国時代の和泉国堺の貿易商人です。
その名前が示すとおり、現在のフィリピン、ルソンと関係の深い商人です。
ルソンに渡海し貿易省を営んでおり、秀吉に対して蝋燭、麝香じゃこう、ルソン壺、唐傘、香料などの珍品を献上し、秀吉の保護を得て日本屈指の豪商となりました。
彼は派手な生活を好んだので目を付けられた、という話もありますが、
一説にはルソン壺が宝物ではなく現地の便所壺だというのがばれて怒りを買ったといわれています。
これだったら現代でも立派な詐欺師と言えるかもしれません。しかし、ルイス・フロイスの日本年報にも、「taicosama(太閤様)」に壺を持っていくともともと安価な壺が非常に高価に売れるという記載があります。
同時に秀吉が壺を独占しようともくろんでいたことも記載があり、
騙されていたのか、秀吉が価値付けをして情報統制して利益を上げようとしていたのかはわかりません。しかしこのルソン壺、お茶を貯蔵したりするのに便利だったようです。

茶器の信用、信頼が極めて不安定で、価格によって価値が生まれていた状態だったのではないでしょうか。まるでバブルの頃の現代アートのようです笑
よくわからない絵に高値が付く。
秀吉の言ったことがそのまま価値になる。すごいですがある意味危ういですね。国家を運営するアイテムの価値暴落が起きたら茶器バブル崩壊でとんでもないことになります。
もしこんなことばらす商人がいたら当然切腹でしょう笑

先ほどの呂宋助左衛門。切腹させられそうになりますが、切腹でもなく、戦うのでもなく第3の道を選びます。
持っていけない邸宅は寄付して、持てる動産を持ってフィリピンに高跳びしました!
切腹を免れ、日本には帰ってこれないものの、財産ごとフィリピンに移動。そこで幸せに暮らしたそうです。
まあ、天下人の秀吉に目をつけられたらどこに行っても捕まる可能性はありますもんね。
当時戦争していて領土はそれぞれバラバラなはずなのに、結構長崎でキリシタンを捕まえたり、護送、移動みたいなことはできていたようです。

千利休の切腹。茶器の価値崩壊を狙ったのか、それとも新商品を使って詐欺まがいのぼろ儲けを狙ったのか。これもありそうな話です。
千利休も海外に逃げられたのではないか、と思います。しかし彼は逃げずに観念し切腹。
千利休自身はキリシタンだったという情報は今のところありません。となると場所のセッティングや紹介はしても、彼自身には布教の情熱はなかったかもしれません。
茶人として、というよりも権力者と結びつき、商人として利に敏い人物だった側面を考えると、ぼろ儲けを狙ってばれちゃったのかもしれませんね。

しかしお茶ってすごいですね。
戦国時代に発展した茶の湯の文化は今でも残っています。
「お茶」だけだと単なる飲み物ですが、関連して裾野産業が広がっています。
先に触れた茶器。
陶器、磁器などは当時珍しかった。天目茶碗など現代でも古美術など芸術品として扱われています。歴史的なものなら億の値段が付き、現代的なものでも棗が40万円、などで売っています。
あれあれ?
そうすると朝鮮出兵で西国の大名が朝鮮から陶工を連れてきた意味も分かりますね。
すごい陶磁器を作れば、超高級品として売れる。これを狙っていたのではないでしょうか。中国の陶磁器ももともと海外で珍重されていました。トルコ(当時オスマン・トルコ帝国)のトプカプ宮殿に行くと、中国の陶器とともに江戸時代の伊万里焼が並んでいます。
高級材の作成と輸出に成功しています。
(利益を得たのは仲介したオランダ商人かもしれませんが。。)

佐賀県の
伊万里焼(磁器の総称で有田焼、鍋島焼などを含む)、
山口県の萩焼、美濃焼(
現在は織部焼)、瀬戸焼、七宝焼、薩摩焼。

朝鮮出兵から朝鮮人の陶工を連れてきて日本各地で陶磁器を作り始めました。これも内製化、且つ地域ブランディングですね。

この時代和菓子も発達。
茶会と連動して華道も発展します。一輪挿しにも陶器が必要になります。
掛け軸、書道、水墨画。当時は日常服かもしれませんが、華のあるな和服や帯、櫛なども必要になったかもしれません。

現在でも京都の産業構造は神社かお茶の家元が握っているといわれますが、ブランディングされた文化に付随して、裾野産業が広がり、それを生業に生活する人達が生まれました。
お茶、すごいですね。

ちなみに蛇足ですが、茶道は学生の間にやっておくとよいです。特に男子はやる人が少ないので、紹介の紹介でわりとすぐ本家本元に繋がります。茶道ができると海外でのパフォーマンスだけでなく、和服の着付け、和菓子作り、華道、和式住宅など様々な文化的知見が学べます。
宮家や上のような伝統文化を維持しているお家と繋がることもできます。住友系など大茶会を定期的に開いていますね。企業ともつながれます。また、茶器の目利きができれば欧米人に茶碗50万円で売る、なんてこともできるかもしれません。
日本の茶道は実はアメリカ人やポルトガル人などの家元もいたりします。華道にも半分触れつつ、和服の着付けなども入るので、日本文化の全体に触れていくことになります。
茶禅一如というような考え方もあり、欧米ではZEN(禅)を学ぶ一環として茶道をとらえている流れもあります。
単純に茶道を嗜むこともできますが、芸術としても、戦国時代のようなネットワークやブランディングも、踏まえると、割と実利的な(?)趣味かもしれませんね。
学生時代は全くモテない部活かもしれませんが、大人になると忙しくて全く踏み込めなくなる趣味です。
深く極めるといい趣味になりそうです笑