2018年開成中学校社会①より 近現代史 日露戦争②
どうも。歴旅です。今日もぶらりと歴史旅。中学受験、御三家の社会を楽しく学びましょう。
日露戦争の続きです。
たくさん出てくる単語の中で、もう一つ気になります。
鉄道敷設権ってなに?
鉄道を敷くからなに?東清鉄道を敷いたら便利になるじゃん。とくらいに思わないでしょうか。それは現在の感覚だからです。
鉄道の機能と意味を考えればわかります。
JR東日本など現在の鉄道会社も同じなのですが、鉄道ができることで、これまで行けなかったはるか遠くまで、重いモノも人も大量輸送できます。そうすると何ができるようになりますか?
①海外で仕事ができる
②移動ができるので新しい駅ができる→町ができる→人が集まる→物流拠点ができる→商売が増える
③珍しい物産が手に入る→チャンスが広がる
もう一つ重要な意味があります。それは、
①大量の軍隊を一斉移動させられる
②大量の武器輸送が可能
ということです。
外国から欲しいものを自国に移動させることができます。港まで鉄道を引けば船に乗せて奪取。
また、自分の国の製品を輸出して売るのも楽になります。遠くまで、内陸まで売る事ができる。商圏が広がればもうかります。つまり、他国の富を持っていくことができ、深く入り込める。
軍事面では、大量の陸軍を短期間で移動させられます。
もはやイリュージョン。あっという間に500~1000人も兵士がやってきたら、町は占領できます。
数年前札幌までロシアから横断鉄道を敷きたいと言ってきましたね。ビジネスが便利になるから、という理由ですが、この頃のことが分かれば意味が分かります。
ロシアが満州を取り、鉄道を敷きたいというのはこうした意味があります。経済と軍隊と植民地化の合わせ技ですね。
平和利用だけだといいのですが…
ちなみに歴旅が学生の時にシルクロードを突破したときのことです。カザフスタンとウズベキスタンの国境に行ったときには、国境警備兵がずらーっと並んでいました。駅は国境でありゲートです。とぼけたふりをして兵士と電車の写真を撮りましたが、ロシア語でめっちゃ怒られました。鉄道=軍事施設という認識は、世界に出たら持っておいた方がいいです。
さて、日露戦争に至る背景です。
日清戦争で李氏朝鮮は中国の冊封体制から離脱しましたが、ロシアが朝鮮半島にぐいぐい入ってきます。自国を独立させるためには、軍事的に強いことが前提です。そうでないとぐいぐい入ってきます。
一方日本はロシアに対して警戒心全開!幕末1861年ロシア軍官津島占領事件というのがありました。何かというと、日韓の間にある津島にロシア軍艦がきて占拠し、兵舎・工場・練兵場を建設して半年以上滞留した事件です。
勝手に何してんの?という事態です。「ちょっと休憩してた」なんて言い訳も通用しない事件ですが、それくらい不凍港が欲しいんですね。軍艦修理するから、という名目で注意しても無回答、木材、牛馬、燃料を強奪、買収、人を襲いはじめ、更には租借を求めてきて勝手に既成事実を作ろうとしました。サラリと国難が起きていますよ。こんなところに基地作られたらガチヤバです。
対馬藩は長崎、江戸にも連絡し、佐賀藩、長州藩をはじめ隣国諸侯にも協力を求めましたが埒が明かない。その状況を打破したのが|小栗上野介忠順《おぐりこうずけのすけただまさ》。
咸臨丸に乗って事態の収拾に当たります。小栗忠順は幕府の老中に、
①対馬を幕府直轄地とすること
②正式な外交形式にすること
③国際世論に訴えること
を提言。しかし老中安藤信正は会見できない、と逃げ、小栗は外国奉行を辞任。
結果的にイギリス公使オールコックに介入してもらいロシアは撤退しました。この時イギリスも対馬の租借を提案しています。
サラリと国難。
この経緯を知っている日本人は、「ロシア、イギリスの帝国主義はかくなるものか」と骨身にしみて感じていたと思います。
こうした動きを一番よく思っていないのがイギリスです。
もともとイギリスとロシアは19世紀グレート・ゲームと呼ばれる覇権争いをしていました。アフガンで、チベットで、海から陸に上がって北上するイギリスと、南下するロシア。
ユーラシア大陸の様々な場所で対立し始めます。
極東で不凍港なんて手に入れたら、イギリス艦隊とロシアのバルチック艦隊がガチでぶつかってしまいますね。イギリスとしてはなんとしてもロシアを封じ込めたい。そのために極東で眠っていた日本で明治維新を起こさせ、世界に巻き込みました。

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