2018年開成中学校社会①より 近現代史 リットン調査団

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民間人が被害に遭い日本軍が出兵した事件は何か。
1.北京事変 2.上海事変 3.長春事変 4.満州事変

本日は満州が国際的に取り上げられていくリットン調査団についてです。
1931年満州事変から日本と中国が衝突。国民党政府は国際連盟に調査を依頼しました。ここで日本、満州国、中華民国各地を3カ月調査。これがリットン報告書です。英米仏独伊の5か国(+トルコ、中華民国の参与委員)で構成されました。要するに何を言っているのか。今日は半分史料読解です。

序説  委員会設置の経緯を説明。 
第1章 清朝没落から支那状況の説明。共和国の出現。内乱。支那国民党結成。支那共産党の跋扈を詳述。
第2章 満州国。支那が満州に無関心だったこと。何もない草原だった満州の今日の発展は日本の努力による旨を述べ、張作霖及び張学良時代の政情から露中紛争が起きていたことを説明。
第3章 日支両国間の満州に関する諸論点=日本の権益を説明。世界に類例を見ない特殊性を認識し、鉄道、商租権その他、満州事変勃発前の重要課題を解説。万宝山事件など満州内での朝鮮排華事件で双方死傷者が出たことを支那側公報から報告。
第4章 その後満州で起きた事件を報告。日本側は日中両軍の緊張感が増していたので準備、対応していた。支那側は攻撃計画がなかった。当日の日本の軍事行動は正当防衛の措置と言えないが、自衛のための行動(誤想防衛)としてあり得るとし、軍事行動の経緯を説明。
第5章 上海事変についての日本軍撤退までを説明。
第6章 満州国について新国家の建設段階を説明。日本の文武官の一団が、独立運動を計画、組織したものと見なし、自発的独立を否認。次に現政府の財政、教育、司法、警察、軍隊、金融を考察し、最後に在満支那人は一般に現政府を支持しないと報告。
第7章 「日本の経済的利益と支那のボイコット」と表現し、支那の態度を不法と認める。
第8章 満洲における経済的利益を詳述し、資源および開発に日支両国の親善回復を不可欠とし、実際的見地から門戸開放を希望
第9章 満洲は世界に類例を見ない特殊事情があるので一国の国境が隣接国の武装軍隊によって侵略されたという簡単な事件ではない。解決の原則および条件は下記。
・日支両国の利益に合致すること
・ソビエト連邦の利益尊重
・現行の多辺的条約と調和し得ること
・満洲における日本の利益の承認
・日支間における新たな条約関係の設定
・将来の紛争解決について効果的施設をなすこと
・支那の主権および行政的保全と調和する範囲内で満洲に自治を許す
・内部的秩序は能率ある地方的憲兵隊により、外部的侵略に対する安全保障はすべての軍隊の撤退および不侵略条約による
・日支間の経済的提携の促進
・支那の改造に対する国際的協力等を紛争解決の条件とする

第10章 日支両国が上の解決討議を承認するならば国連理事会は諮問会議を招集する。会議での議題、ゴールは以下。
・中央政府は満州宣言書に抵触しない。一般的条約の締結と渉外関係の掌握。
・税関、郵便、塩税、印紙税、煙草税の事務の管理は中央政府に留保され、税収の配分については諮問会議で決定する
・行政長官の一次任命権は中央政府が留保し中央政府の対外条約の履行を確保するために命令を発する権限があり、その他は諮問会議により決定し他の権能はすべて自治政府に帰属すべきことなどである。また特別憲兵隊は外国人の協力を得て組織し、満洲における唯一の武装団体とするため外国軍隊は全部撤退し、行政長官は外国人顧問を任命し、その大部分を日本人とすべきとした。

結論
・もともと不毛地帯の満州の住民の大半が支那人。日本の地位経営の成果。
・満州主要勢力だった張作霖は独立を志向せず、あくまで支那政権と自認。
・支那中央政府の権力が脆弱で日本人が保護されていない。
・柳条湖事件及び日本軍の活動は自衛的行為とは言い難い。
・満州国は地元住民の自発的独立ではなく、存在が日本軍に支えられている
・満州国に日本が持つ条約上の権益、居住権、商圏は尊重されるべき。国際社会や日本は支那政府の近代化に貢献できるのであり、居留民の安全を目的とした治外法権はその成果により見直せばよい。一方が武力を、他方が不買運動という経済的武力や挑発を行使している限り平和は訪れない。

日本にとって完全に都合がいいものではありませんが、結果的に満州権益を実質上認めている内容です。特殊と言っているのは植民地ではなく現地独立としている点です。治外法権がないから襲われる。国際世論の急速な悪化はどちらかというと上海事変で軍事力を用いたことなんです。
しかし上海は共同租界でいろんな国が入っていた。それを独占強奪する気なんじゃないか?と思われたのがよくなかった。しかし日本の民間人が殺され、キレてしまった。「上海権益放棄」「各国利益保護を宣言」などで、国際紛争解決はできたと思います。しかし報告書締結前に満州は急いで独立宣言。日本も満州国承認。上海、山東など支那権益も手放せず、満州だけにとどまれない事情が発生し、泥沼に引きずり込まれて行っています。

答え 2.上海事変