平成29年渋谷幕張中学校社会②より 貨幣問題⑯ 徳川吉宗の時代⑥ 世界初お米デリバティブ

5月 5, 2023

どうも。歴旅です。今日もぶらりと歴史旅。中学受験、御三家の社会を楽しく学びましょう。

おコメって深いですね。現在歴史と文化が急速に見直されています。オリンピック前の外国人が多く来る想定で日本文化知ってるの?という問いがあったからかもしれませんが、日本人として知っておいてほしいし、おコメ関連の出題はあると思います。

■大阪の堂島米会所
もともと大阪は米市場を持っていたのですが、大阪を襲た大火で機能停止したため、この機会に江戸商人たちが幕府に願い出て米相場会所を作りました。これに危機感を持った大阪商人。不満を訴えたところ幕府は聞いてくれました。裁判したのは江戸の町奉行|大岡忠相《おおおかただすけ》。裁判って、国の重要な仕組みにまで関与するんですね。結果江戸幕府公認の堂島米会所が誕生しました。

全国で収穫された米はまず大阪に集まるようになりました。そして「正米取引(現物)」と「帳合米取引(先物取引)」が行われ、米価が決まりました。現物は分かりますが、帳合米取引は現代でいうところのデリバティブで、同時代では世界初といえます。
デリバティブってなにか?というと、先に未来の価格を先買いすることです。例えば今年は豊作だった。1㎏=1000円で安い。よし、この値段で来年分も注文しておきます!と発注しておくと、来年同じ時期に1000円で買える権利が得られます。
さて、1年後。今年は不況でした。米が少ないので価格が上がっています。1㎏=2000円になってしまった。みんなこの金額で買うしかないんですが、昨年先に権利を買っていた商人は、1000円で買える権利があります。大量買いしていたとしたら、他の人に売れば1000円で買って2000円で売れる。利益2倍!
凶作でお米が出回らない中そんな金儲けしていいかどうかは置いといて、デリバティブの社会的機能としては、将来起こるリスクを望ましい形に変化させられます。豊作になった。「わー!安すぎる!」不況になった。「わー!高すぎる!」と右往左往しなくても、「来年はちょっと米獲れなさそうだな。少し確保しておこう。」と準備できます。「備えよ、常に」です。

のちの田沼意次の時代の株仲間もそうですが、明治維新で欧州に学んだということもある一方、日本独自に編み出していた最先端の仕組み、技術も多く、日本は西洋から学んだと同時に、「ああ、あれね」とすぐに理解、咀嚼できる基盤があったといえます。吉宗はこの大坂の堂島米会所を通じて、全国への米の流通量をコントロールすることで米価を引き上げる取り組みをしました。

米価の安定化を図ったものの米の流通そのもののコントロールはうまくいきませんでした。そのため元文改鋳を実施し成功。これにより幕府財政は安定化しました。