2018年豊島岡中学校第2回社会より　遣唐使③　遣唐使はイケメンスーパーマン

4月 16, 2023

どうも。
今日もぶらりと歴史旅。

中国の本質をざっくりまとめたところで、
ようやく本題の遣唐使に入ります。

この遣唐使、なかなかタフな仕事です。
重要な役割を果たしてきましたが、同時にリスクも高い。高すぎた。
超一流の人ばかり行くんです。

頭がいい。中国語もできる。仏教もわかる。四書五経もわかる。日本が何なのかを語る事ができる。イケメン。体力がある。国家間の外交ができる。儀礼礼節が分かる。式典運営ができる。服を着こなせる。政治もわかる。軍事もわかる。
大唐帝国に行って「日本人ってすげ～じゃん」と思われないといけないのでイケメン且つ超優秀である必要があります。外交って大変。
しかしそんな人達が海に漕ぎ出し船が難破したら一瞬で全滅。

日本に残っていたらメチャクチャ貢献したはずなのに。
遣唐使不要論もある程度妥当なのです。
だがしかし。コスパ悪すぎるけど、必要だったんです。

それは先の中国の本質を考えたときに、おのずと理解できると思います。

■遣唐使になった人
　はっきり言ってスーパーマンだらけです。
　イケメンだらけ。成績優秀。体力もある。武術もできるし中国語も話せる（人が多い）。大国を相手に外交するのに、それくらいの面子で揃えていかないと駄目だったんです。しかし船が難破して遭難。
　せっかくめっちゃ勉強して唐に渡ろうとしたのに海難事故で亡くなる率も高い。こんなコスパ悪い事をやり続ける理由。
　それはやっぱりかなりの犠牲があっても必要だったからでしょう。

■留学生って
　平和な時代はたいして気にしないのですが、戦時や戦中から回復したばかりなどの時代、留学生はいろんな政治的理由にからめとられます。
　・語学ができるからその国を詳しく理解できる
　・外国人が珍しい時代はトップエリート層とも交流ができる
　・相手国の社会事情や軍備、内情がよくわかる
　・技術や知識を習得し、相手国と同等の知的水準となる

こうした中で、戦争が起こりそうになると留学生はスパイにもなりえますし、外交官にもなりえます。メッセンジャーとして帰って日本に伝えなければならないことも出てきます。
今は平和でよかったですね。

■外交官は命がけ
　留学生と同じかもしれませんが、外交官は命がけの仕事です。そんなに頻度高く国のトップ同士が連絡とれるわけでもなく、書状も何本も書いては海の藻屑となり、やっとこさ届くものです。そうなってくると、実際に「うちの天皇が。。」と直接話をする外交官は相手国との立場、戦争するしない、どういう関係を構築するかの全体にかかってきます。
　教養がないと国ごと見下される。そんな中での外交官は、本当の意味での日本代表。交渉失敗すると軍隊を送って戦争になったり、何をどこまで譲るのか、得られるのかの駆け引きをしなければなりません。発言に責任があります。

■阿倍仲麻呂
　遣唐使の中でもちょっと有名なのが阿倍仲麻呂（あべのなかまろ）。彼は717年の第9回遣唐留学生なのですが、同級生には吉備真備（きびのまきび）などがいました。唐で最高に難しい科挙試験に合格してしまいます。
これってハンパない。中国人だって60歳になるまで受からないといわれるような超難関試験を、留学生が受かってしまうのです。そのまま玄宗皇帝に仕え、中国で仕事をします。文学畑の役職をしていたので、李白、王維など当時超有名な詩人たちと交流しています。
彼は３５年も唐で働いていて、その間遣唐使も何回も来ているのですが、最後には日本に帰りたいと思ったのでしょう。ついに帰国します。この時玄宗皇帝は容易には許可を出さず、王維も「まじかよ、帰っちゃうのかよ！」と嘆き悲しむ歌を作りました。
　そして彼は帰途暴風に遭い、難破してしまうのでした。李白はこの報を聞き七言絶句「哭晁卿衡」を詠んで仲麻呂を悼みました。

仲麻呂が漂流して付いた先はなんとベトナム。当時は安南と呼ばれていました。唐に帰ろうとするのですが７５５年安史の乱が勃発。内乱が始まっては帰るに帰れないので帰唐は断念。そのままベトナムで仕事を始めるのですが。
最終ハノイの安南都護府で安南節度使になりました。
節度使は軍事統括、徴税などもできるので、ぶっちゃけ中国から来たベトナム統治権者。まさか日本人がベトナムでそんなことしていたとは。相当すごい地位です。
仲麻呂は日本に帰国することができず、最終ベトナムにて生涯を閉じました。
彼は歌人で百人一首に歌が残っています。

「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」

日本への望郷の念を抱いて、中国で詠んだ歌です。
しみじみしますね。